いつもと違う。そしていつもと同じ様に蒸し暑い8月31日

8月31日

この日を聞くと1番に思い出すのが夏休み最後の日。子供の頃、夏休みを満喫してやろうと掲げた目標は7月中に宿題を終わらす事。ただそんな目標は早々と夢やぶれ、この日は必死で宿題を終わらす日としか記憶がない。しかし今年の31日はコロナウイルスの影響で楽しい夏休みは2週間しかなく、子供達は早々と2学期がスタートしてその慌しさも感じられなかった。

いつもと違う。そしていつもと同じ様に蒸し暑い、8月31日。

しかし、今年はもうひとつ違う8月31日になった。それは自分の父親の最後の出勤日である。小さい頃から当たり前の様に見ていた酒屋の正装でもある前掛け姿を見る最後の日。実務44年というまだまだヒヨッコの自分には想像もできない時間を費やした会社に出勤する最後の日。

いつもと違う。そしていつもと同じ様に蒸し暑い、もうひとつの8月31日。

ただ、ウチの親父のいい所でもあり、わかりにくい所でもあるのだが、自分とは真逆であまり感情を表に出さない。何事も淡々とこなしていくので特別感のない「いつもの1日」。朝、出社して前掛けをギュッと結んで伝票を確認。首に掛けたタオルで汗を拭いながら酒を車に積み込む。配達先に着くと44年培ったお客様との関係性は強く深い。いい意味で友人の様な会話は信用度の証拠で他の人ではできない何かがある。談笑しながら荷物を下ろし、空瓶を積み込んでまた次のお客様の所へ。

いつもと同じ。1つ1つの仕事をいつもの様にこなして行く。

ただその背中は自分が知っている後ろ姿より随分小さくなった。自分が子供の頃はガッチリした体型で二の腕も太く、力持ち。身長は僕より高い177センチ。ソフトボールは少年ソフトボールの監督もしたくらいでかなり上手。いわゆる自慢の父親の姿だ。その姿が目に焼き付いている為か、少し痩せ細った姿はどこか寂しい。まー、体自体は元気なので安心しているのだが。

子供の頃の夏休みは父親の助手席に乗り、一緒に配達に行った。ゴルフ場の茶店での納品時に缶の回収や納品の手伝いをした。今思えば邪魔だったろうな(笑)昼ご飯は母親が作ってくれた弁当をエアコンも付いていない軽トラックを木陰に止めて2人で食べる。夜の配達はAMラジオからプロ野球中継が流れていて窓からは涼しい風と虫の声が車内に入って来たのを昨日の事の様に思い出す。

広島を出て神戸で就職し、母親の郷である香川に来た。24歳で親になり、必死で子供3人を育てて自分のやりたい事を我慢してきたと思う。だから、よくいう第2の人生のこれからを、今度は思う存分自分の為の時間に使って欲しい。自分の趣味、旅行、新しい事への挑戦、孫との時間。まずは体を休めて、ゆっくりと楽しいんで過ごしてください。あなたが必死で働き、人生の大半を注いだタニーズは僕たちがしっかりと受け継ぎます。だから安心してください。

いつもと同じで、いつもとは違う様にできないから、やはり直接は言えない。照れるので文章に残します。

 

あなたが父親で誇りに思います。

 

ありがとう。

 

そして本当にお疲れ様でした。

 

 

 

プロフィール

中川 浩行
中川 浩行
香川県観音寺市の酒屋「タニーズ」の専務 中川です。「その先の笑顔の為に」を理念に飲食店さんを全力サポート!もちろん一般小売・全国発送もしています。広島カープ、ゴルフ、お酒を飲むことが好き。そして何より仕事も趣味も仲間とワイワイ楽しむのが1番好きです!ビアテイスター、ビール検定2級