酒屋はお酒を美味しくできない。

「酒屋はお酒を美味しくできない」

コレだけ聞くと語弊を招きそうだが、単刀直入にいうとコレが正解だと思っている。
なぜなら酒屋は屋号に「酒」とついているのに関わらず、お酒を造らないからだ。酒屋は0から1を産んでくれた造り手さんから想いのこもったお酒をお預かりし、それを代わりに皆さんにお伝えして販売しているに過ぎない。

では酒屋がすることは何なのか?それは以下にお酒の質に対するマイナス面を減らす事だと思っている。我々は酒を美味しくプラスにすることはできないが、マイナスを極力減らすことはできるのである。例えば、直射日光が当たる場所に放置しない。出来るだけ揺らさない、振らない。外気が高温時の長時間移動は避ける。お酒を古くしない。(これはお酒にもよる)など、出せばキリが無いがお酒をマイナス要素にする物や事は多い。

そんな当たり前のような事を当たり前にするだけの事なのだが、大量生産、多売薄利の時代に慣れてしまったせいか価値以上に価格とスピードを優先して大切な部分を蔑ろにしている業者、あるいは飲食店が多くみられるのが現実である。
例えば、ビール。僕はビールには結構うるさい方なので品質管理をちゃんとしていない酒屋や飲食店を見ると残念で仕方ない。炎天下、フォロー(カバー)もつけずに車をぶっ飛ばしてガンガン揺らしたり、目線がお客様ではなく同業に向いて値下げ競争ばかりしている酒屋。遠方の酒屋は安いからという理由で半日くらい車に積まれたお酒を平気で売ったり、ビールサーバー洗浄も全くせずビールを提供してしまう飲食店。これではせっかくの美味しいビールも台無しだし、まず飲む気がしない。

ただ今後は酒屋の在り方、飲食店の在り方が変わっていくだろうし変わらなければいけないと思っている。それは「量」から「質」へのシフトチェンジだ。酒屋は配送や保管の仕方についてもう一度見直していかなくてはいけないと思っているし、飲食店はよりプロフェッショナルなお酒をどう提供していくかが必須になってくると思う。それが造り手から引き継いだお酒を飲んでいただく皆さんに届くまでの我々がやっていく事。どれくらいマイナスポイントを減らすかという事なのだ。

酒屋は酒を美味しくする事はできない。
我々がやれる事は限られてはいるが「質」へのこだわりは造り手の想いを繋ぐという事。タニーズはそんな酒屋のプロでいたいと思っている。

 

プロフィール

中川 浩行
中川 浩行
香川県観音寺市の酒屋「タニーズ」の専務 中川です。「その先の笑顔の為に」を理念に飲食店さんを全力サポート!もちろん一般小売・全国発送もしています。広島カープ、ゴルフ、お酒を飲むことが好き。そして何より仕事も趣味も仲間とワイワイ楽しむのが1番好きです!ビアテイスター、ビール検定2級